Novo Nordisk社は、世界最大級のヘルスケア企業の一つとして、特に糖尿病や肥満といった慢性疾患の治療に向けた取り組みにおいて、複数のプロジェクトを同時に推進しています。同社は、これらのプロジェクトを成功に導くためには、プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)ソリューションの導入が、プロジェクトの進め方を変革するうえで極めて重要であることを、早い段階で認識していました。この取り組みは、PPM を成功裏に導くうえで、チェンジマネジメントとユーザーの利用定着がいかに重要であるかについて、貴重な示唆を提供しています。
成長する組織における複雑性のマネジメント
前述のとおり、Novo Nordisk 社は、糖尿病、肥満、希少疾患に対する革新的な医薬品の開発に注力することで、この100年の間に急速な成長を遂げてきました。しかし、その成長とともに、組織や業務の複雑性も大きく増していきました。プロジェクトのタイムライン、リソース配分、ポートフォリオ全体の可視性の管理はますます困難になり、特にExcelやMS Project といった複数のツールに依存していた同社にとっては大きな課題となっていました。
同社のプロダクトオーナーである Umair Khiljee氏は次のように話します。
「事業が拡大するにつれ、プロジェクトのタイムラインやリソース管理は複雑になっていきました。私たちには、プロジェクトの進捗、リソース配分、そしてポートフォリオ全体の状況を一か所で一元的に管理できる統合型の計画ツールが必要でした。そうした背景から、私たちはPlaniswareに着目し、2019年から2020年にかけて導入を進めました。」
同社は2019年までにPlanisware の導入を全社的に開始しており、その展開はまず医薬品開発プロジェクトを担当する CMC(Chemistry, Manufacturing, and Controls)部門から始まりました。目標は、複数の部門を統合する統一システムを構築し、プロジェクトマネジメントを簡素化することでした。
導入とユーザー利用定着における課題を克服
6万8,000人の従業員を擁するグローバル組織全体にPPMシステムを導入するには、十分な時間、予算、そして綿密な計画が不可欠です。これはまさに、Novo Nordisk社が直面していた大きな課題でした。中でも最大のハードルとなったのは、専門知識を持つ社内の有識者(SME:Subject Matter Expert)の協力を得ることでした。彼らはすでに日々の業務で多忙を極めていたからです。
「すでに業務で手一杯のチームから賛同を得ることは、大きな課題でした」と、Khiljee氏は振り返ります。
そこで同社は、Planiswareを一度に全社展開するのではなく、段階的に導入していくアプローチを取りました。まずはCMC部門から開始し、その後、ライフサイクルマネジメント(LCM)プロジェクトへと適用範囲を拡大。これにより、製品のライフサイクル全体を通じて、プロジェクトマネジメントのあらゆる側面を網羅できる体制を整えていきました。
しかし、最大の課題は導入の技術面ではなく、ユーザーの利用定着でした。
ユーザーの利用定着こそが、PPM導入の成否を分ける重要な要素となりました。導入初期、特にトップダウンで導入が進められた部門において抵抗がありました。たとえば、
「あるプロジェクトオフィスでは、トップダウンのアプローチを取ったことで、新しい仕組みの意義を理解してもらうまでに時間がかかりました。」と同氏は振り返ります。これは、チームリードやプロジェクトディレクターの間では、新しいシステムの価値をイメージしづらかったからです。
一方で、検討の初期段階からエンドユーザーが参加していた部門では、導入は非常に円滑に進みました。
「別のプロジェクトオフィスでは、最初の段階からエンドユーザーが検討プロセスに関与していました。その結果、ずっとスムーズに移行が進みました」とUmair Khiljee氏は語ります。このようなボトムアップ型の進め方では、ユーザー自身が新しいシステムを「自分事」として捉えやすくなり、日々の業務の中でどのように役立つのかを理解しやすくなります。
では、これらの経験から得られた最も重要な教訓は何だったのでしょうか。それは、導入の早い段階からユーザーがプロセスに関与していることが、ユーザーの利用定着につながるという点です。新しいシステムが自分たちの業務にどのような前向きな変化をもたらすのかが見えることで、チームはより前向きに受け入れることができます。
チェンジマネジメントへの取り組み
チェンジマネジメントを前進させるうえで特に効果的だったのは、システムがもたらす価値を、ユーザーそれぞれの業務上のニーズと結び付けて捉えることでした。システムがどのように業務を支えるのかを丁寧に共有できた部門では、結果として高い関与が見られました」と、Umair Khiljee氏は言います。
強固なガバナンス体制を構築したことも、移行をより円滑に進めるうえで大きな役割を果たしました。役割や責任を明確に定義することで、Planiswareを各チームの日々の業務の自然な進め方に沿って活用できるようにしました。また、定期的なトレーニングに加え、継続的なサポートを提供することで、ユーザーは新しいシステムに徐々に慣れていくことができました。
「定期的なトレーニングと継続的なサポートに注力することで、ユーザーがシステムの価値を実感しやすくなりました。」とKhiljee氏は加えます。
部門ごとに異なる成熟度への対応
大規模なシステム導入ではよく見られるように、部門ごとに成熟度レベルが異なり、それが新しいシステムへの適応度にも影響しました。成熟度が低い部門に対しては、よりきめ細やかなアプローチが必要であることは明らかでした。
「今後、弊社はマルチレベルプランニングといった新機能の導入も予定しています。これは現在検討段階にあり、2025年夏以降のリリースでの実装を見据えています。この戦略的な機能追加により、チームリーダーやプロジェクトディレクターにとって、システムの価値がさらに高まることが期待しています。」
また、同社はプロダクトロードマップを導入し、全社で共有できる「単一の信頼できる情報源(Single Source of Truth)」を整備しました。これにより、各部門にとって全社像がより明確に把握できるようになり、新しいシステムの重要性についても共通認識が醸成されていきました。
Planiswareがもたらした効果とは
Planiswareの導入以降、Novo Nordisk社では、プロジェクトマネジメントのプロセス全体において、明確な改善が見られています。中でも最も顕著なものとして挙げられるのが、プロジェクトの再計画における効率性の向上です。「Planisware導入以前は、プロジェクトを再計画するだけで、20~30人が参加する会議を最大10回行う必要がありました。今では、すべての計画を1つの画面で可視化し、1回の会議で完結できるようになっています」と語ります。
リアルタイムでの洞察の提供や、リソース配分を効率化できる点も、導入直後から大きな効果を発揮しました。現在、1,350人のユーザーが150以上のプロジェクトと400件超の臨床試験を管理しており、Planiswareは同社の業務運営に欠かせない基盤となっています。
同様の変革を検討している企業に向けて、同氏は次のようにアドバイスを送ります。
「技術的な導入と同じくらい、ユーザーの利用定着とチェンジマネジメントを適切に設計することが重要です。早い段階からユーザーと対話し、業務の進め方を理解したうえで、プロセスの一部として一緒に進めていくことが成功に繋がります。」
また、柔軟性も重要な要素です。組織が成長・変化していく中で、システムも新たなニーズや課題に対応できるものである必要があります。同氏は、全社的な足並みをそろえるためには、強固なガバナンスと明確なコミュニケーションも欠かせないと強調しています。
Novo Nordisk社による Planisware導入の取り組みは、プロジェクトマネジメントをスケールするにあたってあらゆる組織が直面する課題に対する多くの示唆を与えてくれます。ユーザーの利用定着を見据え、業務プロセスとシステムの価値を結び付け、変化を丁寧にマネジメントすることで、同社は成長を続けながらPPMの在り方を着実に進化させてきました。
Planiswareによるプロジェクトマネジメントの変革のご関心をお持ちでしたら、ぜひお問い合わせください。