プロジェクトを遂行し、価値を実現するためには経営資源(リソース)の活用が不可欠です。不確実性やリスクを見通し、良い計画を立てても、実際にプロジェクトを推進するためのリソースがなければ計画は絵に描いた餅に終わってしまいます。これは当然のように思えるかもしれませんが、プロジェクトエコノミーの現在では、イノベーションや変革の必要性が謳われてプロジェクトが次々と立ち上げられているため、組織が抱えるプロジェクト数に比べてリソースが量・質ともに十分ではありません。このため、リソース不足のため価値の高いプロジェクトが開始できなかったり、キャパシティを超えて人的リソースに複数プロジェクトに従事してもらい負担を課してしまう、などの状況が発生します。
リソースマネジメントはこのような状況から脱却し、組織全体として最小のリソースで最大の成果をあげるために必須であり、プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)の中核を占めるマネジメント領域です。一方、リソースマネジメントは対象組織や範囲が広範であるため、全体像を捉えにくく、人によって想像する内容が異なる恐れがあります。
本記事ではリソースマネジメントの全体像やその構成要素を解き明かしていきます。
リソースマネジメントの概要
リソースマネジメントにおけるマネジメント対象はヒト、モノ、カネなどのリソース(経営資源)です。リソースの最大の特徴はその有限性です。組織が活用できる人材・設備・資金などには限りがあるため、この範囲内でリソースを有効活用して成果を最大化することが企業に求められており、このことがリソースマネジメントの必要性や重要性を生み出しています。
リソースマネジメントは組織全体として最小のリソースで最大の成果をあげるために、リソースを効果的・効率的に配分・活用するためのビジネスプロセスやマネジメント手法です。成果を出すためにはインプットであるリソースが必要不可欠である一方、組織が保有・活用できるリソースには限りがあるため、リソースマネジメントを通じてリソースを有効活用することが重要となります。また、リソースマネジメントを行う際にはインプットであるリソースの有限性とともに、リソースを活用して何を実現したいかという目的・アウトプットについても常に意識して意思決定を行うことが重要です。他のマネジメント領域も同様ですが、リソースマネジメントというプロセスを実行することが目的ではないことは強調してもしすぎることはありません。
それでは限りあるリソースを用いて組織全体で最大の成果を実現するために、リソースマネジメントでは何を実施すべきでしょうか。リソースマネジメントは以下のようなプロセスから構成されます:
- 組織として望む成果・目標を定義
- 上記に至るまでの戦略を策定し、具体的な取組をロードマップとして定義
- 上記ロードマップを遂行するために必要となるプロジェクトを洗い出し
- 上記プロジェクトを実行するために必要となる、適切なリソースを適時に確保・育成・維持
- プロジェクト目標を達成するために必要な各種アクティビティを遂行するためのリソースの質と量を見積もり、当該リソースを要求
- プロジェクトの優先順位に従い、要求されているリソースをプロジェクトへ配分
- プロジェクト開始後に発生するプロジェクトの内部・外部環境変化を踏まえてリソースを再見積
- プロジェクトの各アクティビティに要した実績時間・費用を計上し、予実分析を実施
- プロジェクト実行中にリソースの稼働・使用状況をモニタリングし、必要に応じて当該プロジェクトへリソースを追加配分もしくは他プロジェクトへ再配分、など
上記から見て取れるように、リソースマネジメントは以下の複数の軸が重なり合って行われるマネジメントプロセスです。このためリソースマネジメントは全体像が捉えずらく、人によって解釈の仕方に相違が生まれやすいマネジメント領域になります。
- 対象リソース(ヒト、モノ、カネ)
- 対象期間(短期、中期、長期)
- 企業活動種別(戦略、オペレーション)
- 実施者(経営層、中間層、現場層)
ここからはリソースの中で最も重要な人的リソースに焦点を当て、残りの3軸(対象期間・企業活動種別・実施者)でリソースマネジメントの全体像と分類を示し、詳細を説明していきます。
リソースマネジメントの全体像
以下がリソースマネジメントの全体像になります。リソースマネジメントは大きく7つのステップから構成されており、各ステップが対象とするマネジメント対象期間、種別、実施者が異なります。
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