プロジェクトには不確実性・リスクが付きものであり、特にVUCAの現代ではプロジェクトの企画・計画時にプロジェクトが完了するまでに起こりうる全てを想定することは不可能です。従って、環境変化に伴う新たなリスクを踏まえて柔軟にプロジェクト計画を見直し、適応していくことが重要であり、そのための手法であるダイナミックプランニングを前回の記事で紹介しました。
一方、プロジェクト実施中にダイナミックプランニングで新たなリスクに対してプロジェクト計画を適宜見直し、環境変化へ適応させるとともに、プロジェクトの初期計画策定の段階で想定される不確実性とリスクを洗い出し、それらがプロジェクトのスケジュールやコストなどにどのような影響を与えるかを把握して、事前に対応策を検討することもリスクマネジメントの観点から重要です。プロジェクトリスクマネジメントでは様々な手法を通じて、定性・定量の両面からリスクを分析していきますがが、本記事では定量的分析の代表的手法であるモンテカルロシミュレーションについて紹介をします。
モンテカルロシミュレーションの概要
モンテカルロシミュレーションは確率論的問題を解析するための手法で、大量の乱数を用いて何度もシミュレーションを行なうことによって近似解を求める計算手法です(出典:IT用語辞典バイナリ)。その起源は第二次大戦中、コンピューターの父と呼ばれるジョン・フォン・ノイマン(John Luis von Neumann)によって、中性子の物質中を動き回る様子を探るために考案されたといわれており、現在ではモンテカルロシミュレーションは様々な分野で活用されています。
プロジェクトマネジメントの世界では、モンテカルロシミュレーションを実施し、プロジェクトで想定される不確実性とリスクがプロジェクトのスケジュールやコストなどに対してどのような影響を及ぼすかをシミュレーションするのが一般的です。様々な適応先がありますが、本記事ではプロジェクトスケジュールを例としてモンテカルロシミュレーションについてみていきます。
プロジェクトスケジュールに対してモンテカルロシミュレーションを実施する主な背景は次の通りです。まず、プロジェクトマネージャーやコントロール・アカウント・マネージャー(CAM)などがプロジェクト計画時にその時点の最良な情報に基づいて、各アクティビティの所要期間を見積もりますが、あくまで見積のため、当該アクティビティに対して実際に要する時間は異なる可能性が十分にありえます。この差異は見積時に利用可能な情報の質と量に加え、見積者のバイアスなどによって発生します。各アクティビティに対する所要期間の見積は完璧ではないため、プロジェクト全体の完了日までの所要期間の見積も確定できません。そのため、各アクティビティの所要時間の見積を、それぞれのリスクと全体のスケジュールの流れ(アクティビティ間の順序と依存関係など)に基づいて組み合わせることで、プロジェクト全体が完了するまでの期間の見積を作り出す必要があります。
そしてこの見積を作り出す一般的な方法がモンテカルロシミュレーションです。モンテカルロシミュレーションは、プロジェクトのスケジュールリスクを分析するための強力な数学的手法です。この手法では、各アクティビティの所要時間をランダムに生成し、その結果を基にプロジェクト完了までの期間を推定します。こうすることで、プロジェクトの全体的なスケジュールと不確実性を理解し、適切に管理できるようになります。特に大規模なプロジェクトや高度に不確定な要素を含むプロジェクトではモンテカルロシミュレーションが重要です。
プロジェクトマネジメントにおけるモンテカルロシミュレーションの詳細
それではモンテカルロシミュレーションを実施するうえでの具体的なステップを説明します。まずはスケジュールリスクに対してモンテカルロシミュレーションを実施する前に、シミュレーションの前提事項として以下の対応を完了させます:
(※本記事の続きは、本ページより資料をダウンロード頂くとご覧頂けます)