サンゴバンでPlaniswareのグローバル管理者を務めるヴァレリー・ゴレット氏は、分権型の組織構造の中でどのようにツールを導入したのか、直面した課題をいかに乗り越えたのか、そしてその過程で得られた教訓について語ります。
分権型オペレーションを持つグローバル企業
サンゴバンは、76か国にわたって16万人以上の従業員を擁するグローバル企業で、設立からすでに約360年の歴史を誇ります。創業当初は鏡の製造業者としてスタートし(かの有名なフランス・ヴェルサイユ宮殿の「鏡の間」に鏡を納入したことで知られています)、現在では建築分野における世界的リーダーへと成長を遂げています。
「R&D部門には世界中に約3,700人の研究者が在籍しており、マーケティングチームと密接に連携しながら取り組んでいます。私たちのイノベーションの中心にあるのは常にお客様です」とヴァレリー・ゴレット氏は説明します。
サンゴバンの組織は意図的に分権型で構成されており、建設関連事業においては中央および地域のR&Dチームが連携しながら、それぞれの地域の顧客ニーズに合ったイノベーションを実現できる体制となっています。「中央のチームは地域チームをサポートする役割も担っており、このような組織体制によって、短期・中期・長期のプロジェクトをうまくバランスさせながら管理できています」とゴレット氏は語ります。
この体制はサンゴバンのような企業にとって理想的ではありますが、一方で、複数の事業ラインにまたがってプロジェクトおよびポートフォリオマネジメントを整合させるうえで、調整の難しさという課題も伴います。
PPMソリューションの必要性
2018年の時点で、サンゴバンはイノベーションプロジェクトをコーポレートレベルで管理するための、より高度なシステムを必要としていました。それまで使用していた社内ツールは保守が困難になりつつあり、もっぱら予算管理に使われるようになっており、本来のプロジェクトおよびポートフォリオの統合管理という目的からは外れてしまっていたのです。
「私たちのチームがイノベーションを推進し、将来の成長を促進できるようなソリューションが必要でした」とヴァレリー氏は説明します。「Planiswareを選んだのは、単なる予算管理を超えて、実務レベルでのプロジェクトおよびポートフォリオマネジメントにまで活用範囲を広げたかったからです。私たちの目標は、異なる事業部門が連携して取り組める共通の枠組みを構築することでした。」
Planiswareの導入は段階的なアプローチで進められ、当初の焦点は予算管理とレポーティングに置かれていました。「私たちのモットーは『ゆっくり、着実に』です」とゴレット氏は語ります。「新しいツールへの移行には時間と慎重な計画が必要であり、チームに過度な負担をかけないようにすることが重要だと考えていました。」
段階的なPlaniswareの導入
Planiswareの導入は、まず予算管理機能に焦点を当てて始まりました。「最初は約60人のユーザーからスタートし、プロセスはシンプルに保ちました」とゴレット氏は振り返ります。この第一フェーズは、今後の展開に向けた土台を築くうえで最も重要なものでした。
予算管理機能が整った後、チームはPlaniswareの適用範囲をポートフォリオマネジメントへ、さらにその後プロジェクトマネジメントへと拡大していきました。現在では、R&Dやエンジニアリング部門を中心に600人以上のユーザーがPlaniswareを活用しており、旧来のシステムは完全に置き換えられています。
ヴァレリー氏は、この段階的なアプローチが、Planiswareの役割を自然に、無理なく拡大していくうえで非常に有効だったと強調します。
「毎年、既存機能の改善や新機能の追加を目的とした小規模なプロジェクトを継続的に展開しています。ユーザーと密に連携し、アンケートを通じてフィードバックを収集することで、ツールが現場のニーズに合致しているかを常に確認しています。」
チェンジマネジメントと定着
複数のツールからPlaniswareへの移行には相応の労力がかかりました。最大のハードルの一つは、従来の社内開発ツールと比べて「無料ではない」と受け取られていたPlaniswareをマネージャーたちに受け入れてもらうことでした。この障壁を乗り越える上で、R&Dディレクターの支援が大きな役割を果たしました。
「R&Dディレクターが、導入に必要なリソースと予算を確保してくれました」とゴレット氏は説明します。「彼女の支援は、導入フェーズだけでなく、組織全体への展開を後押しするうえでも不可欠でした。」
トレーニングも移行プロセスの重要な要素でした。サンゴバンは、動画、ドキュメント、専用のSharePointサイトなど、継続的な支援のための教材に大きく投資しました。また、毎年実施しているアンケートを通じて、ユーザーが難しいと感じているトピックを把握し、優先的に対応することで教育内容の充実を図りました。
「新しいツールを積極的に使いたがる人もいれば、抵抗を示す人もいます」とゴレット氏は語ります。「私たちは、まず実験的に使ってみようとする前向きなユーザーに注力し、建設的なフィードバックを得ることを重視しました。彼らの熱意が、他のユーザーにもツールの価値を伝える原動力になりました。」
アンケートの結果から、ポートフォリオマネージャーはPlaniswareを“プロジェクト管理のための信頼できる唯一の情報源”として高く評価している一方で、プロジェクトリーダーは主にレポーティングツールとして捉えている傾向があることがわかりました。「この認識を変えるために、私たちは社内のプロジェクトマネジメントプロセスを見直し、Planiswareを日常業務における重要なプラットフォームとして位置づける取り組みを進めています」とゴレット氏は述べています。
データ品質の確保
データの品質は、すべての企業に共通する課題です。「ユーザーがデータを信頼できることが何より重要です」とゴレット氏は強調します。「私たちは、主要な事業ラインごとにデータ品質を監督する3名の管理者を配置し、とくに年間予算編成や中長期計画といった重要な時期には、定期的なチェックを実施しています。また、担当領域ごとに週1回の情報交換を行い、経験やベストプラクティスを共有しています。」
サンゴバンでは、Planisware内において正確性を担保するための明確なデータ管理ルールも導入しています。「コストコントローラーは、専用のレポート機能を使ってデータの整合性をクロスチェックしており、予算プロセス中に無許可の変更が行われないよう、ユーザー権限の設定も厳格に管理しています」とゴレット氏は説明します。
サンゴバンのこれから
今後、サンゴバンはPlaniswareの利用をさらに多くのユーザーへと拡大していく予定です。「プロジェクトチームのメンバーにも参画してもらい、プロジェクトリーダーがプラットフォーム上で直接タスクを割り当てたり、進捗をより効果的に追跡できるようにしたいと考えています」とヴァレリー氏は語ります。「次のステップとしては、リソースマネジメントを改善し、チームメンバーの配置を最適化することで、業務の過負荷や遊休を防ぐことも検討しています。」
さらに長期的には、Planiswareへのローカルチームの参加も目指しています。これにより、分権型組織におけるコミュニケーションとコラボレーションの強化が期待されます。「現在、Planiswareを主に利用しているのは中央のチームですが、ローカルチームも統合されれば、両者間の対話が大幅に向上し、より一体感のある業務が可能になります」とゴレット氏は指摘します。
同氏は、同様の取り組みを検討している他の企業に向けて重要な教訓を共有しています。「スポンサーシップが鍵です。強力なリーダーシップの支援がなければ、導入の成功は難しいでしょう。」
また、デジタルツールと業務プロセスの整合性も極めて重要であると強調しています。「デジタルソリューションの効果は、それを支えるプロセスの質にかかっています。プロジェクトおよびポートフォリオマネジメントの実務を磨くことで、Planiswareが私たちにとって真に有効なツールとなりました。」
Planiswareを段階的に導入し、ユーザーのフィードバックを取り入れながら、データ品質を確保してきたサンゴバンは、分権型組織におけるマネジメントの新たな道筋を切り開いてきました。さらなる機能強化も視野に入れ、サンゴバンにおけるPlaniswareの未来は、これまで以上に明るいものとなっています。