Stora Ensoのように確固たる地位を築いている企業にとって、イノベーションの始まりは700年以上前にまでさかのぼります。もともとは鉱業からスタートし、現在では再生可能な製品に焦点を当てることで、時代の変化に適応し続けています。
Stora Ensoのように確固たる地位を築いている企業にとって、イノベーションの始まりは700年以上前にまでさかのぼります。もともとは鉱業からスタートし、現在では再生可能な製品に焦点を当てることで、時代の変化に適応し続けています。しかし、パッケージ、建設、バイオマテリアルといった多岐にわたる分野でプロジェクトを管理するには、高度な調整力が求めらており、手作業では次第に困難になっていきました。
この課題に対応するため、Stora EnsoはPlaniswareの導入を決断。プロセスの標準化とイノベーションマネジメントの最適化を目指しました。
本記事では、製品・ポートフォリオ開発担当バイスプレジデントのトゥオマス・プオンティ氏と、イノベーションスペシャリストのテーム・サリント氏が、700年の歴史を持つこの企業がいかに先進的なアプローチでプロジェクトおよびポートフォリオ管理を進化させたかを紹介します。
Stora Ensoの歴史
Stora Ensoは世界最古の企業のひとつですが、現在ではサーキュラーバイオエコノミー(循環型バイオ経済)の分野で存在感を発揮し、持続可能に管理された森林から再生可能な製品を生み出す企業へと変革を遂げています。「私が拠点とするフィンランドでは、森林は生活の大きな一部であり、Stora Ensoはその中核を担っています」とトゥオマス氏は語ります。
世界で2万人の従業員を擁する同社は、パッケージから建築資材に至るまで、さまざまな産業向けに持続可能なソリューションを提供しています。
「もし牛乳を紙パックで注いだことがあったり、紙コップでコーヒーを飲んだことがあるなら、そのパッケージ素材は私たちが作ったものである可能性が高いです。私たちは液体用包装ボードの分野で世界をリードしています」とトゥオマス氏は付け加えました。
旧来の手法からの脱却
Planisware導入以前、Stora Ensoのプロジェクト管理プロセスは分断されていました。「当時は100以上のプロジェクトを、Excelなどのツールを使って個別に管理していました」とテーム氏は語ります。このやり方では、プロジェクトポートフォリオ全体の可視性やコントロールを維持するのが難しく、中央集約されたシステムがないことによって非効率が生じ、経営層が各プロジェクトの状況を把握しづらいという課題がありました。「だからこそ、状況を俯瞰できる統合的なソリューションが必要だったのです」とテーム氏は続けます。
Stora Ensoは、プロジェクトおよびポートフォリオ管理の一元化を目的に、2022年にPlaniswareの導入を決定しました。目的は、プロセスを効率化し、プロジェクトの可視性を高め、すべてのチームを統一されたツールで連携させることにありました。
同社は、製品開発の全工程を管理する「PLOM(プロダクト・ライフサイクル・オペレーティング・モデル)」も導入しました。PLOMは、アイデア創出から市場撤退までを網羅し、製品開発を体系的に導くモデルです。「PLOMには、イノベーション、プロダクトマネジメント、市場開拓といったフェーズが含まれており、すべてを確実に進めるためのフェーズゲートプロセスを採用しています」とトゥオマス氏は説明します。
「Planiswareを導入したことで、イノベーション、プロダクトマネジメント、リソースマネジメントといった要素をすべて1つのシステムに統合できるようになりました」とトゥオマス氏は語ります。「最も賢明だった判断のひとつは、Planiswareの“標準機能をできるだけそのまま活用することでした。完璧なプロセスを最初から定義しようとすると複雑になりすぎると気づき、あえてシンプルにしたのです。」
Planiswareのトレーニングとチェンジマネジメント
Stora Enso全社へのPlanisware導入は、決して容易な取り組みではありませんでした。複数のチームにまたがる250人のユーザーが対象となる中で、スムーズな定着を図ることが重要な課題となりました。
「当初はバーチャルトレーニングを試みたのですが、参加者のエンゲージメントが十分ではありませんでした」と、当時の展開に深く関与していたPlaniswareのプロジェクトマネージャー、マノン・ヴァランタンは振り返ります。「そこで、フィンランドとスウェーデンでの対面トレーニングに切り替えたところ、結果は大きく改善しました。」
トレーニングは中核メンバー向けとエンドユーザー向けの両方で構成された包括的な内容でした。「各部門に“トレーナーのためのトレーニング”モデルを導入し、キーユーザーが自部門のシステムチャンピオンとして機能する体制を整えました」とテーム氏は説明します。「こうした“スーパーユーザー”たちが他のユーザーへのトレーニングやトラブル対応、日常的なサポートを担うことで、システムが業務に自然と定着していきました。」
このような実践的なアプローチが、Planiswareを現場のワークフローにしっかりと根付かせる要因となったのです。
「Stora Enso社内のトレーナーがトレーニングを主導したことは非常に重要でした」とマノンは付け加えます。「私がシステムを教えることもできますが、同じ会社の同僚が、身近な言葉や実際の業務例を使って説明することで、参加者の理解や共感が格段に深まるのです。」
透明性、品質、効率の向上
Planiswareを導入して2年が経過した現在、Stora Ensoではすでに大きな成果が現れています。「最も大きな改善は“透明性”です」とトゥオマス氏は語ります。「以前は、経営層がポートフォリオ全体で何が起きているのか、ほとんど把握できていませんでした。今ではリアルタイムでデータにアクセスでき、優先順位に関する対話や意思統一が進みました。」
プロジェクトの品質も、Planisware上で標準化されたプロセスにより向上しました。「コンプライアンスチェックからサステナビリティの考慮まで、すべてが初期段階から組み込まれています」とトゥオマス氏は続けます。「たとえば食品パッケージの場合、安全規制への適合が必要です。Planiswareでは初期段階でそれを確保できるため、後々の高コストな手戻りを防ぐことができます。」
また、テーム氏はリソースマネジメントの改善も指摘します。「今では、チーム全体のリソース配分が可視化されており、キャパシティの予測がしやすくなりました。これにより、新しいプロジェクトをいつ開始すべきかの判断もより的確になりました。」
過去を振り返り、トゥオマス氏とテーム氏は共に、「小さく始めて段階的に拡大することの重要性」を学んだと語ります。
「最初は一気に多くのことを導入しようとしすぎました」とテーム氏は認めます。「今思えば、まずは小さく始めて、一歩一歩進みながら課題に対応していく方が良かったです。」この段階的なアプローチにより、Stora Ensoはチームの実情に応じてシステムを柔軟に適応させていくことができました。
すべての企業が固有の課題を抱えているため、導入段階では柔軟性が極めて重要です。プロセスの中でアプローチを調整する余地を持ち、構成フェーズではドラフトを作成し、関係者の意見を取り入れながら調整を進めていくことで、自社に最適なソリューションが構築されます。
今後、Stora EnsoはPlaniswareのさらなる機能活用を進め、システムをより直感的かつ日常業務に自然に組み込まれるものにしていく予定です。
「高度なユーザーが自分たちでカスタムレポートを作成し、プラットフォームを各自のニーズに合わせて柔軟に活用できるようにしたいと考えています」とトゥオマス氏は語ります。「私たちの目標は、“少ないリソースでより多くの成果を出す”こと。そして、リソース管理や財務面での見通しの最適化を実現することです。」
また、同社は今後もトレーニングやチェンジマネジメントの戦略をさらに洗練させ、新しい運用ルールやプラクティスが組織全体にしっかりと定着するよう取り組んでいく方針です。
Stora Ensoは今後もPlaniswareの活用を拡大していく中で、ひとつだけはっきりしていることがあります。それは、同社がイノベーションとサステナビリティに注ぐ情熱が、創業から700年を経た今もなお、まったく揺らいでいないということです。