世界各地にまたがるプロジェクトを同時に扱いながら、緻密な調整を求められる。それがTractebelのような組織が直面する現実であり、リソースや業務フローをいかに効率的に管理するかという課題があります。
ENGIEグループの一員であるTractebelは、原子力、再生可能エネルギー、インフラといった分野でエンジニアリングプロジェクトを提供しています。しかし、80か国にわたり5,600人以上の従業員が活動する中で、これらのプロジェクトを効果的に管理するには、より体系的なアプローチが求められていました。そこで2021年、TractebelはPlaniswareを導入し、プロジェクト管理プロセスのデジタル化と、各地域における業務の整合化を図ることを決断しました。
Tractebelのアプリケーションマネージャーであるヨアン・フォンタニエ氏と、Planisware MISのエンゲージメントマネージャーであるギヨーム・ホールドナーが、PlaniswareがどのようにTractebelのプロジェクトマネジメントの在り方を変革し、社内のコラボレーションを促進したかについて詳しく語ります。
プロジェクト管理のデータと実務を統一する“唯一の情報源”の構築
Tractebelは世界中で多様なプロジェクトポートフォリオを管理しています。「最近のプロジェクトには、英国での原子力発電所のエンジニアリング、オーストラリアでのグリーン水素の生産、スリランカでの水供給インフラ整備などがあります」とヨアン氏は述べます。
Tractebelの事業は特に大規模なエネルギープロジェクトを扱う場合、精度と効率性が強く求められます。しかし、Planisware導入以前は、複数のグローバルプロジェクトにまたがるリソースやワークフローの管理において、さまざまな課題が存在していました。各チームがExcelを含むバラバラなシステムを使用していたため、プロジェクトの進捗、リソースの配分、財務データを一貫して把握することが難しかったのです。
「組織の各部門にまたがるプロジェクト管理の実務を整合させるためには、デジタルソリューションが必要でした」とヨアン氏は説明します。こうして、Tractebelは2021年にPlaniswareの導入を決定しました。
すべてのプロジェクト要素をカバーする包括的なツール:Planisware Enterprise
Tractebelは、自社のデジタルトランスフォーメーションを推進し、プロジェクトマネジメントの標準化を図るためのツールとして、Planiswareを選定しました。ヨアン氏は、TractebelのビジネスにおいてPlaniswareが提供している主な機能について次のように説明しています。
「このシステムは、提案管理からリソース配分、レポーティングに至るまで、プロジェクトマネジメントのほぼすべてのフェーズをカバーしています。」
最も大きな改善の一つが、TractebelのERPシステムとのPlaniswareの統合でした。「PlaniswareをERPと連携させることで、プロジェクトマネジメントと財務の間の調整を効率化しました」とヨアン氏は述べます。「その結果、承認にかかる時間は半分になり、プロジェクトの立ち上げにかかる時間も40%短縮されました。」
こうした効率化は、Tractebelの業務パフォーマンス向上において非常に重要な意味を持っており、プロジェクトマネージャーが重要なデータにより迅速かつ正確にアクセスできるようになりました。
ギヨームは次のように付け加えます:
「リソースマネジメントはTractebelにとって中核的な機能です。私たちは、会社全体からチームレベルに至るまで、業務負荷の分布を明確に把握できるダッシュボードを開発しました。これにより、マネージャーがより効果的に負荷をバランスさせることが可能となり、目に見える効果が出ています。」
「One Tractebel」カルチャーの実現
Planisware導入プロジェクトの主な目的のひとつは、Tractebelが掲げる「One Tractebel」という統一された企業文化を醸成することでした。チームが複数の国にまたがって存在する中で、プロジェクトマネジメントプロセスを標準化することは、社内のコラボレーションを促進し、透明性を高める手段でもありました。
「Planisware導入前は、チームごとに異なるプロセスを使っていたため、拠点をまたいだ連携が難しくなっていました」とヨアン氏は説明します。「Planiswareによって、プロジェクトの管理方法を標準化することができ、異なる地域の社員同士がスムーズに連携できるようになりました。ベルギーにいてもブラジルにいても、同じプロセスで進められるため、統一された企業文化の促進にもつながっています。」
プロセスの統一に加えて、Planiswareはプロジェクトマネージャーとコントローラー間の連携も強化しました。「現在では、プロジェクトマネージャーが自分たちの計画の財務的影響をリアルタイムで確認できるようになり、コントローラーもシステム上ですぐにフィードバックを提供できるようになりました」とヨアン氏は述べています。
課題の克服:ユーザー定着までの道のり
明確なメリットがあったにもかかわらず、ユーザー定着までの道のりは決して平坦ではありませんでした。「多くの人がExcelに慣れ親しんでいたため、新しいデジタルプラットフォームへの移行は大きな一歩でした」とヨアン氏は認めます。
「組織内には文化的な違いもありました。しっかりと確立されたプロセスを持つチームもあれば、プロジェクト管理の手法がまだ体系化されていないチームもありました。全員の足並みをそろえるには時間がかかりました。」
ギヨームは、変化への抵抗の一例を振り返りました:
「営業の同僚が、Excelで見積書を作成して、そのまま実行チームに引き継ぐのはとても簡単だと言っていました。彼にとっては楽だったかもしれませんが、その分、他の人たちに余計な負担がかかっていたのです。Planiswareは、その流れを一新し、営業から実行までプロセスを統一することで、部門間の連携と業務の継続性を確保できるようになりました。」
ユーザー定着を促進するための主要な戦略のひとつが、継続的なトレーニングとサポートの提供でした。Tractebelは「キーユーザー」あるいは「チャンピオン」と呼ばれる担当者のネットワークを活用し、同僚への指導やトレーニングの実施、そしてPlaniswareチームへのフィードバック提供を担ってもらいました。
「また、定期的にニュースレターや『今週のヒント』メール、リリースノートを配信し、全員が常に最新情報を把握できるようにしていました」とヨアン氏は付け加えます。「こうした取り組みにより、移行期の混乱を最小限に抑え、ユーザーが一貫してサポートされていると感じられる環境を整えることができました。」
継続的改善のカルチャー
2021年にPlaniswareを導入して以来、Tractebelはユーザーからのフィードバックをもとに、プラットフォームの活用を継続的に進化させてきました。2023年には、1,700名のPlaniswareユーザーを対象としたアンケートを実施し、インサイトの収集と改善点の特定を行いました。「この調査から分かったのは、頻繁に使っているユーザーにとっては有用な一方で、使用頻度の低いユーザーはその複雑さに苦労していたということです」とギヨームは説明します。「それ以降、インターフェースを簡素化し、画面数を削減するなど、とくに日常的に使用しないユーザーにとって使いやすくなるよう改善しました。」
ヨアン氏もこれに同意し、「改善を進めるうえでユーザーの声は不可欠です」と強調します。「今後も、ユーザーのニーズに応える形でシステムを継続的に改善していくことが私たちの目標です。現在はパフォーマンスの課題に取り組んでおり、専任のタスクフォースを立ち上げて、優先的に対応しています。」
PlaniswareがTractebelにもたらした最大のメリットの一つが、データの質と透明性の向上です。導入以前は、ExcelやSalesforceなど複数のシステムにデータが分散しており、レポーティングが困難でエラーも多発していました。「Planiswareによってすべての情報が1つのプラットフォームに集約され、データの精度が向上しただけでなく、プロジェクトマネージャーがリソース計画の財務的影響をリアルタイムで把握できるようになりました」とヨアン氏は述べています。
データ品質を維持するために、Tractebelは「必要な情報を確実に取得しつつ、過剰な入力負担を避ける」というバランスにも注力しています。「プロセスをスムーズに保つため、必須項目は最小限に抑えつつ、本当に重要な情報だけを確実に収集するようにしています」とヨアン氏は説明します。「こうすることで、ユーザーを過度に圧迫することなく、必要なデータをしっかりと確保できるのです。」
未来に向けて
TractebelとPlaniswareのこれまでの協業を振り返って、ヨアン氏とギヨームは共に、プロジェクト成功の鍵は「チェンジマネジメント」と「ユーザー定着」にあったと振り返ります。
「ツールの導入はビジネス戦略と整合させる必要がありますし、ユーザーを最初の段階から巻き込むことが重要です」とヨアン氏はアドバイスします。「経営層の強力な支援があるかどうかも大きな違いを生みます。リーダーが変革を後押しすれば、ユーザーの定着もはるかにスムーズになります。」
「ツールの導入はビジネス戦略と整合させる必要がありますし、ユーザーを最初の段階から巻き込むことが重要です」とヨアン氏はアドバイスします。「経営層の強力な支援があるかどうかも大きな違いを生みます。リーダーが変革を後押しすれば、ユーザーの定着もはるかにスムーズになります。」
「ユーザーからのフィードバックや、トップダウンでの変更要望がバックログとして溜まっています」とギヨームは語ります。「今後の焦点は、まずシステムを安定させ、ユーザーが順応したことを確認してから、新機能の展開に進むことです。『急がば回れ』が成功の鍵です!」