導入時期の把握 プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)は企業の規模、収益レベル、活動の種類を問わず導入できますが、次のような状況は、PMO設立の検討が必要であることを強く示している可能性があります。 新製品開発、IT、デジタルトランスフォーメーション、エンジニアリングなど、管理しなければならないプロジェクトが増加していき、厳密な評価を経ずに新しいプロジェクトが開始されていると思われる場合 プロジェクトのパフォーマンスが十分に可視化されていない状態で、期待通りの成果の得られないプロジェクトが多発している場合:プロジェクトが必要とする時間やリソース、予算が増大したり、やり直しや機会損失が頻発している場合 どのプロジェクトもこれまで取り組んだことのない種類のプロジェクトのように感じられる場合:経験が十分に生かされておらず、ベストプラクティスが共有されていないか、簡単に利用できるようになっていない場合 環境変化が激しい分野にもかかわらず、新しいチャンスへの対応が遅すぎる場合 リソースを部門横断的資産としてプロジェクト間でもっとうまく共有する必要がある場合(大半の組織ではプロジェクトを単独の部署で管理しているため、特に希少なリソースに関して、キャパシティの問題が発生しがち) 新規プロジェクトの開始、一部の既存プロジェクトへの取り組みの増強、一部のプロジェクトの中止について、よりよい意思決定のために信頼性の高い最新のデータを必要とする場合 これらのいずれか1つだけでもPMOを設立する十分な理由となりえますが、新製品開発(NPD)プロジェクトの成功にビジネスがますます依存するようになっている場合には、より緊急性が高まります。なぜなら、新製品開発プロジェクトは、企業にとってリスクの高いプロジェクトの1つだからです。 NDPプロジェクトには、以下のようなリスク領域があります。 市場リスク:市場投入するときにその市場はまだ存在しているのか、予想どおりの利益を得ることができるのか、市場に十分な対価を支払う準備が整っているか、既存または新規参入の競合他社による代替品はどうなるか、などのリスク 製品リスク:明確な差別化要因を持っているか、実際の技術的実現性はどうか、そのための専門知識が組織内にあるか、特許上の問題はないか、などのリスク 組織リスク:完成させるために十分なリソースを直ちに投入できるか、製造のための態勢は整っているか、その製品は既存の販売方法や販売チャネルに適合するか、などのリスク 予想不可能なリスク:以上の課題を克服して理にかなった製品を開発したとしても、なお、その成功を危うくしうるリスク(規制や税制の変更、新たな貿易政策、原材料の不足、製品コンポーネントの大幅な増加、パンデミックなど) PMOがこれらの課題やリスクに対処するために、ステージゲート法が最適な選択である理由は何でしょうか。 PMOにステージゲート法を選択する5つの理由 理由1:ステージゲート法はリスクの緩和を本質とするため ステージゲート法の特徴との一つとして、その構造上、プロジェクトに内在する一部のリスクを緩和する手法となっています。 ステージゲート法ではプロジェクトの遂行プロセス全体の計画を立てるため、どのステップも省略されることがない上に、各フェーズの終わりに義務付けられている成果物がさらなる安全装置として機能 ステージゲート法の基本原則の1つは、段階的に増えていくコミットメント。プロジェクト開始時の実質的コミットメントは、ほとんどの場合、最もコストのかからない、プロジェクトの第1フェーズ(アイデア創出/コンセプト)へのコミットメント。次のフェーズ(プロトタイピング)ではより多くのリソースを必要とするが、まだ負担は軽く、この時点までにプロジェクトを成功させるための主な障害の多くが特定され、それらに対処するための計画立案が可能 上述のことから、プロジェクトに必要な全コミットメントが行われるのは、ステージゲート法プロセスの最終段階である「市場投入」に到達してから 構造上、各ゲートは本質的に、自社の目的や戦略的テーマとプロジェクトとの整合性を見直し、最終結果が全社あるいは部門の戦略と矛盾しないよう、必要な調整を行う機会として機能 各ゲートで要求される成果物の一部に財務情報が含まれることが多いため、プロジェクトの進行に応じて情報がより正確に。したがって、プロジェクトが企業の財務状態に及ぼす影響をプロセスの初期段階で検討することが可能。また、プロセスの進行とともにより多くの情報・データを利用できるようになるのに応じて、財務状況への影響予測の精度を高めていくことが可能。工数と投資収益率のバランスを早期に検討しながらも、徐々に改善していくことが可能 理由2:ステージゲート法はプロジェクトの遂行に規律をもたらすため 新製品開発やソフトウェアの導入、ITプロジェクトなど、プロジェクトの目的が“何かを変化させること”である場合は特に、プロジェクトの遂行はかなり混沌としたプロセスになる可能性があります。ステージゲート法は、構造化された、完全で透明なプロセスを、全員に可視化された形で提供します。 透明性:ステージゲート法では、プロジェクトとその進捗状況が権限のあるすべてのステークホルダーに可視化されるため、経営陣やステークホルダー、さらには顧客にもわかりやすい明確なロードマップが構築可能 構造化:ステージゲート法のプロセスは、構造化されていることにより、プロジェクトマネジャーの任務の明確化と、彼らが「何を」することになっているか、「どのような結果」を出す必要があるかを示す指針の提供に有益 完全性:ステージゲート法は、プロジェクトの遂行やイノベーションに最も成功している企業を取材・研究することで誕生した手法です。数多くの企業から学んだ教訓とベストプラクティスを具体化しているため、プロジェクトの遂行プロセスにおいてステップの省略や重大なミスの確実な回避が可能となります。 理由3:ステージゲート法は柔軟で実行が容易なため ステージゲート法はモジュール構造になっているため、さまざまな状況に適応できる非常に柔軟性の高い手法です。3ステージ/2ゲートのシンプルな基本的なステージゲート法から、5ステージ/4ゲートのエンタープライズ向けのステージゲート法まで、お客様の環境に合わせたプロセスを設計することができます。 また、同じ会社、組織、部門の中で、複数の異なるステージゲート法を使用することも可能です。実際にお客様の中には、さまざまな特徴を持つプロジェクトのニーズ(プロジェクト規模の大小やさまざまな規制要件など)に合わせて、最大で12種類のモデルをうまく共存させている企業もあります。 ステージゲート法は拡張性にも優れています。最初は単一の部門や一種類のプロジェクトに適用するシンプルなモデルからスタートし、より複雑なプロジェクトを扱うグローバルなプロセスへと徐々に移行し、最終的には全社的にこのプロセスを適用するということが可能です。実際、多くのお客様がこの方法で導入されています。 理由4:ステージゲート法はあらゆる種類のプロジェクトに非常によく適合するため プロジェクトの大小や拠点の数を問わず(1,000人規模であっても10人規模であっても)、また拠点の数を問わず(複数か国関与するグローバルプロジェクトであっても1つの拠点で行われるプロジェクトであっても)、ステージゲート法は有効に機能するプロセスを提供します プロジェクトの種類問わず、ステージゲート法は有効に機能します。例:新車の設計、新しいソフトウェアシステムの実装、宇宙ロケットの組み立て、次世代の救命薬の発売、等 業界やプロジェクトの種類(IT、製品開発、社内プロセスなど)を問わず、プロジェクトを構造化しその実現を支援します 幅広いプロジェクトに適合できる理由は、ガバナンスプロセスの基本を維持しつつ、自社が取り組むさまざまな種類のプロジェクトに合わせてモデルを簡単に調整できるからです。 理由5:ステージゲート法は単純明快で、誰もが理解できるため ステージゲート法は他の方法とは異なり、複雑な用語や直観的でない概念を必要としません。実際、人間本来の傾向と非常によく調和しています。たとえば、私たちは何かに取り組むとき、何度も立ち止まっては進捗状況や出来栄えを確認しながら作業を進めます。これはビジネスの世界に限ったことではありません。 これにより、チェンジマネジメントが相当容易になります。複雑で、時には謎めいたプロセスより、論理的で構造化されたステップに基づく方法の方が理解されやすいでしょう。実際の進捗状況や最新の前提条件に基づいて、意思決定や費用のコミットメントが段階的に行われるのです。これほど理にかなったことはありません。 結論 – NPDにはガバナンスメソッドとPMOが重要である理由 新製品を開発している企業は、業種や規模を問わず、市場に影響を及ぼすイノベーションを目指しています。既存事業を守りつつ、限られたリソースを活用して、よりすばらしい製品やサービスを市場に投入し、投資収益率を最適化するためにはどうすればよいでしょうか。 この最大の問いに答える手がかりを得るために、私たちは成功している多くの企業で使用されている主要なガバナンス手法の1つに焦点を当て、PMOがその導入と運用をどのように支援するかを考察しました。 大胆なイノベーションには、多大な複雑さとリスクが伴うことが多く、そのために意思決定がいっそう難しくなる傾向があります。だからこそ、経営から業務レベルまで、組織全体を貫く明確なガバナンス手法が重要になるのです。 「正しいプロジェクトを正しく行う」。これが、すべてのガバナンスに共通する基本的なスタートとなるはずです。プロセスには多少のアレンジが必要かもしれませんが、基本構造は製品、業界、企業規模にかかわらず共有することができます。 本シリーズがお客様とその組織へのヒント、または勇気づけになれば幸いです。 ステージゲート法を導入するための具体的なチェックポイントや手順の詳細についてご関心をお持ちでしたら、喜んでご紹介させていただきます。ご遠慮なくお問い合わせください。 「どれほど優れた論理的なプロセスでも、自然に実現することはない。誰かがそれを実現する必要がある。」 ロバート・G・クーパー「新製品の成功」 プラニスウェアについて プラニスウェアは全世界で25年以上の歴史を持ち、世界的な調査会社であるガートナーやフォレスター社で取り上げられる日本市場で唯一のプロジェクトポートフォリオ管理(PPM)ソリューションを有する企業です。 国内外の、自動車を含む製造業、消費財、ライフサイエンス、化学、ハイテク、その他の分野において、世界最大規模のR&Dプロジェクト100件のうち33%以上にプラニスウェアのソリューションが活用されています。プラニスウェアは、PPM分野のベストプラクティス手法のサポートに関して認証を受けており、製造業における代表的なガバナンス手法であるStage-Gate®Ready認定を取得した数少ないソフトウェアソリューション企業の1つでもあります。