PepsiCo社は、世界最大級の食品・飲料企業の1つであり、同社の商品は1日あたり10億回以上消費されています。200を超える国・地域で事業を展開し、年間売上高は860億米ドル超、従業員数は30万人以上にのぼります。
顧客起点で描くイノベーションビジョン
2020年後半、PepsiCo社はイノベーション推進の全体方針を刷新するために、新たなソフトウェアソリューションの検討を開始しました。世界中のビジネスリーダーに対して、パイプライン全体の透明性を確保することが狙いでした。PepsiCo社グローバル・コマーシャライゼーション担当シニアディレクターであるクリス・メイソン氏は、次のように述べています。「CEOをはじめとする経営陣が、PepsiやDoritosのような主要ブランドについて『世界で推進する最大のアイデア50件を見せてほしい』と言った場合、理論上は提示できました。しかし実際には、共通のリポジトリに標準化された指標とともに整備された、信頼できる高品質なデータが不足していたのです。」
メイソン氏率いるイノベーションチームは、同社のイノベーション活動のモダナイゼーション(近代化)を主導する役割を担っていました。パイプラインの可視化に加え、同氏のチームは世界各国の市場において、さまざまな課題に直面していました。プロセスの各段階で適切な問いを立てられるよう、ステージゲートプロセスの刷新も必要とされていました。また、意思決定における役割分担と目指すべき方向性について、メイソン氏は次のように説明しています。 「私たちは、イノベーションを顧客価値、事業性、実現可能性という観点で捉えています。これらの要素を、新たなステージゲートプロセスの中心に据えたいと考えていました。これらは、あらゆる市場で共通して見られた重要な課題でした。プロジェクトマネージャーの役割は、必ずしもプロジェクトを市場投入まで導くことではなく、適切な問いを投げかけることで、的確で根拠あるビジネス判断を実現することにあります。
イノベーションに関するKPIにおいて最も重要なのは、各イノベーションプロジェクトが、承認されたビジネスケースに対して市場でどの程度の成果を上げているかです。基本的な指標として純売上高も用いられますが、同社はイノベーションを単なる財務数値だけで捉えているわけではありません。消費者の共感を得るとともに、成長機会と整合するイノベーションの創出を重視しています。その実現に向けて、消費者セグメント、デマンドスペース(需要領域)、多様なニーズ状態を精緻に分析し、特定の顧客層に最適化されたイノベーション推進アジェンダを展開しています。
メイソン氏は次のように述べています。「私たちは、消費者に今、そして将来にわたって長く支持される製品を市場に届けられているでしょうか。ポートフォリオをセグメント化する際には、さまざまなニーズ状態やデマンドスペース、消費者コホートを分析し、それぞれの顧客に応えるイノベーション推進アジェンダを確実に実行できているかを確認しています。また、KPIの観点で言えば、特にリソースが限られる現在において重要なのが、私たちが『定着力( stickability )』と呼ぶ指標です。あるイノベーションが初年度に500万ドルの成果を上げたとして、2年目にはどれだけの成果を生み出せるのか。市場において、そのイノベーションを持続的に定着させるために、どのようなアクションが必要なのか。これらは非常に重要なKPIです。
適切なステークホルダーを巻き込み連携する
「イノベーション憲章の策定当初から、同社ではコマーシャライゼーション、R&D、マーケティングという3つの主要部門の協力を得ていました。イノベーション領域におけるプロジェクト運営の難しさを踏まえ、成功に不可欠な社内連携について、メイソン氏は次のように説明しています。「Planiswareを通じて推進している取り組みは、基本的にコマーシャライゼーションとR&Dのパートナーシップによって成り立っています。加えて、3つ目の重要なグループがマーケティングです。私たちが毎年推進する数千件のアイデアのうち、その99%はマーケティング部門から生まれています。新たなシステムやプロセス、働き方を導入するにあたり、マーケティング部門のメンバーをしっかり巻き込むことが極めて重要でした。世界中のマーケターがPlaniswareや新たなツールを受け入れなければ、この取り組みを成功させることはできません。」
イノベーション推進アジェンダのデジタル化
PepsiCo社では現在、部門横断のチームが共通のデジタル環境上で連携し、すべてのデータを一元管理しています。クリス・メイソン氏は次のように説明しています。「私たちは、真の意味で単一の信頼できるデータ基盤への移行を進めています。これはデータ品質の向上に加え、業務効率の改善にも大きく寄与しています。もう一つの大きな変化は、事前承認プロセスへの移行です。Planiswareアプリを活用することで、ビジネスケースのゲート関連ドキュメントを、事前にシニアステークホルダーへ配布できるようになりました。ステークホルダーは通知を受け取り、Planiswareアプリ上でログを確認し、承認・却下、あるいはイノベーションフォーラムで議論したいコメントを追加することができます。」
「イノベーションフォーラムで10件のプロジェクトを議論すると仮定してみてください。そのうち7件に大きな問題がなければ、事前承認を経て次のステージへ進めることができます。残りの会議時間は、各部門のシニアメンバーが対面で集まり、重要な課題の議論に充てられます。主な論点は、事前承認プロセスを通じて指摘された3件のプロジェクトに関するリスクです。」
組織全体におけるデータ管理の徹底に関しては、新たな使命感と明確な重点領域が生まれています。メイソン氏は、データ品質に対する責任の共有について次のように述べています。「データ品質は誰の責任なのか、という議論は常にありますが、私の答えは“全員の責任”ということです。ニューヨークにいる私と小規模なチームだけで、システム上のすべてのプロジェクトのデータ品質を担保することは不可能です。しかし、世界中の何百人ものユーザーに対して、適切なトレーニング、適切な関与、そして適切なコミュニケーションを行うことで、データ品質を大きく向上させることが可能であり、すでにその成果が現れ始めています。また、明確なデータ定義(ディクショナリ)、データ標準、さらにPlanisware内のツールチップを整備することで、最初の入力段階からすべてのフィールドが正しく入力されるようにしています。」
※【日本語字幕の設定方法】日本語字幕は、動画再生画面右下の設定アイコンをクリックし、設定の「字幕」オプションより「日本語」にチェックを入れた状態でご覧下さい。
複数年にわたる取り組み、グローバル展開、そして連携強化へ
メイソン氏は、イノベーションと外部ツールとの連携に関する今後の展望についても次のように述べています。「想定外のメリットの一つは、Planiswareと他のツールやシステムとの接続性の高さです。私たちにとってはまだ初期段階ではありますが、Planiswareと連携・インターフェース接続したいデータやシステムは常に存在します。そうしたデータを双方向でやり取りできる必要があります。具体例としては、社内システムとの連携があります。Planisware上で承認したビジネスケースに対し、プロジェクト開始後は社内の純売上データを連携することで、市場における実績を把握できるようにしています。現在はすでにその機能を実現しており、今後の拡張としては、さらに第3の要素を加えることを検討しています。すなわち、社内で承認されたビジネスケースを含め、複数のデータを統合的に接続していく構想です。」
PepsiCo社では、Planiswareの展開にあたり、「グローバルに考え、ローカルで実行する」アプローチを採用しています。クリス・メイソン氏は、期待値を伝えつつ、成果を積極的に発信していく重要性を強調しています。「PepsiCoの中では、これまでの学びを継続的に強化していく必要があります。その一環として、取り組みの中で得られた成果について、大きな成果であれ小さな成果であれ、積極的に称賛し共有していくことが重要です。また、これは複数年にわたる取り組みであるという認識をしっかり浸透させる必要があります。私たちには大きなアジェンダと、今後の拡張に向けた大規模なロードマップがあります。そして、それらの実現に向けて、Planiswareが大きく貢献していると確信しています。
変化の激しい環境下で、プロジェクトマネージャーとチームがどのようにPlaniswareを活用して業務を整理・推進しているのかを紹介する動画をぜひご覧ください。