近年、Planiswareが支援するほぼすべての組織が、何らかの形でデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいます。その理由は、デジタル化が次のような取り組みに不可欠となっているためです。
- より迅速で使いやすいサービスによる顧客体験の向上
- プロセス上の非効率(遅延や無駄)の削減
- 生産性の向上
- 新たな製品・機会の創出
- 収益性の向上
ビジネスの世界における「デジタルトランスフォーメーション(DX)」とは、企業のあらゆる領域にデジタル技術を統合することを指します。対象は、社内業務から顧客向けの活動、さらにはデジタル化された製品・サービスにまで及びます[注1]。その結果、企業の業務の進め方や顧客への価値提供のあり方は、根本的に、時には大きく変革されます。
DXは、企業がデジタル活用能力を高めていく過程に応じて、「3つのステップ」からなる変革への「道のり」として捉えることができます。
- 統合された可視化によるDXの推進
- 効率的な意思決定によるDXの最適化
- 継続的改善を実現するアジャイルなDX
ステップ1:統合された可視化によるDXの推進
企業は長年にわたり、製品やサービスの提供方法を磨き上げてきました。一方で、デジタル化は組織に大きな変革をもたらすものであり、そのすべてを事前に計画して進めていくことは一般的に困難です。導入が部分的・断片的になりやすく、経営層や現場の担当者から消極的な反応や、時には抵抗を招くこともあります。
さらに、計画と実行の間に生じているギャップは、必ずしもすぐに明らかになるとは限りません。調査によると、経営層はデジタル化の進捗を断片的な情報でしか把握できておらず、変革の進展が思うように進まないことへの不満を抱えるケースが多いことがわかっています[注2]。また、DXプログラムに関する情報は複数の場所に分散しており、マネジメントも十分に連携されていない状況にあります。
経営層がDXプログラムを構成するさまざまなプロジェクトの状況を十分に把握できていないと、データ収集の摩擦やボトルネックが生じ、意思決定が遅れたり、必要な意思決定が行われなかったりします。
また、経営層が数年先を見据えたロードマップやOKR(Objectives and Key Results:目標と主要結果)などの目標を定めていても、組織全体で進行中および計画中のすべてのプロジェクトを一覧化した「Book of Work」を俯瞰できていなければ、投資判断は十分な情報に基づかないまま行われ、適切な優先順位付けも難しくなります。
可視性が不足していると、プロジェクトチームは自分たちの貢献を実感できなくなることもあります。たとえ戦略ビジョンに共感していたとしても、変革全体の進捗や、自分たちがその中で果たしている役割を把握できません。そのような状況では、モチベーションやコミットメントは次第に低下していきます。
点在する情報をつなぎ合わせ、全体像を可視化するには、ポートフォリオ、プログラム、プロジェクトに関するデータを一元化し、信頼できる単一の情報源(Single Source of Truth)として集約するためのプロセスと、それを支えるツールが必要です。
- 経営層向けビュー:データに基づく戦略策定・意思決定を支援
- プログラム/プロジェクトマネージャー向けビュー:実行を支援
- チームメンバー向けビュー:作業管理とチームの貢献状況の可視化を支援
ステップ2:効率的な意思決定によるDXの最適化
DX全体の成功は、次の取り組みをどれだけ最適化できるかに大きく左右されます。
- デジタル施策に重点を置いたリソース配分
- 技術的負債を防ぐための高品質なデリバリー
プロジェクトマネージャーやプログラムマネージャー、チームにとって、デジタル施策は「やるべきことがまた1つ増えた」にすぎないことも少なくありません。デジタルプロジェクトに割り当てられたリソースは、他の2~3件のプロジェクトや日常業務(会議や事務作業など)も同時に担当しているケースが一般的です。このように業務が分散すると生産性が低下し、プロジェクトのデリバリー期間も長期化します。リソース配分を最適化するには、まずデジタル施策に割り当てたリソースを、その施策に専念できるようにすることが重要です。
- リソースの過剰割り当てへの対応
- 割り込み作業やタスク切り替えによる非効率のモニタリング
- ボトルネックとなるリソースへの対応
デジタル製品やデジタル化された業務プロセスを、市場や社内に展開するうえで、品質は最優先事項です。不十分な品質の製品やプロセスを導入し、顧客やユーザーの不満を招けば、変革の全体が危うくなります。複雑すぎる、性能が十分でない、あるいは不具合を抱えた製品やデジタル化されたプロセスは、市場やユーザーから受け入れられず、抵抗を招く結果となります。たとえプロジェクトが予定どおりのスケジュールと予算で完了したとしても、市場への浸透やユーザーの受け入れを実現できなければ、成功したとは言えません。
ステップ3:アジャイルの実践 ― 継続的改善を実現するDX
DXを実現するには、新たな機会が生まれるたびにデジタル技術を活用し、戦略や市場の変化に応じて迅速に方向性を見直していく力が欠かせません。この変革の道のりにおける第3のステップでは、組織はポートフォリオ手法のフレームワークにアジャイルのプロセスを取り入れ、変化への迅速な対応力を高めます。
アジャイルと聞くと、IT部門やソフトウェア企業におけるアプリケーション開発手法であり、「自分たちには関係ない」と考える人も少なくありません。しかし、それは誤解です(マット・ライトによる記事「 An Executive’s Action Plan for Enterprise Agile Transformation and Sustainment」参照)。エンタープライズアジャイルは、品質管理やリーンプロセス改善をルーツとしており、あらゆる業種・業態の組織に適用できます。ScrumやSAFe(Scaled Agile Framework)などのアジャイル手法に限定されるものではありません(Planiswareは、これらを含むさまざまなアジャイル手法を包括的にサポートしています)。
導入事例:人命を救うDX
製薬企業は厳しい規制のもとで事業を行っており、製品の開発、試験、市場への供給には何年もの歳月を要します。また、1つのプロジェクトには数億ドル規模の研究開発費が投じられます。市場投入後に製品を段階的に改良していくことは容易ではなく、新製品を販売するには、厳格な政府の試験・承認を経なければなりません。
Planiswareが提供するアジャイル手法への対応により、この製薬企業はわずか数か月で事業の方向転換を実現し、新型コロナウイルスワクチンの開発に着手することができました。
同社は、他の取り組みから数億ドル規模の投資を振り向け、かつてないスピードで経営戦略を転換することができました。その結果、迅速化された政府の承認プロセスに対応し、有効なワクチンを開発しただけでなく、大量生産を実現できるよう事業運営も迅速に適応させました。
Planisware Enterpriseソリューションは、次の機能を提供します。
- さまざまな戦略・製品開発シナリオをシミュレーション・評価する機能を提供
- 予算の再配分やリソースシフトの影響を評価する、継続的かつアジャイルな予算配分プロセスを支援
- 年次予算サイクルを含む複雑で硬直的なプロセスの変更を可能に
多くの企業では、予算は年1回策定されるため、年度の途中で予算を再配分することは非常に困難であり、場合によっては不可能です。この企業は、予算編成をより継続的で柔軟なプロセスへと見直すことで、複数の研究開発プロジェクトの間で迅速に方向転換できるようになり、数十年に一度とも言える重要な製品を市場に送り出しました。
まとめと提言
DXは、決して容易な取り組みではなく、長期にわたる変革の道のりです。製品やプロセス、それらを推進するプロジェクトは、今もデジタル戦略を支え続けているでしょうか。それとも、いつの間にか戦略との整合性を失ってしまっているでしょうか。
組織に根付いた従来の慣行や考え方は、多くの変革の取り組みを停滞させてきました。
価値の提供は、リソースの有効活用を促進し、摩擦やボトルネックの解消につながっているでしょうか。DXによって生み出される成果を継続的に可視化し、その効果を周知することが、変革を持続させる鍵となります。
プロセスは、複雑なやり方から、ソフトウェアソリューションによって実現されるシンプルでアジャイルなプロセスへと移行し、複雑さが解消されつつあるでしょうか。過度に複雑なプロセスは、本来軽減しようとしているリスク以上のリスクを生み出してしまうことも少なくありません。
皆様は、DXを成功に導くうえで、何が最も重要だとお考えですか。
注1 : ビステオン社CIOのラマン・メータ氏「A 3-Step Guide to Digital Transformation」『CIO Magazine』 2017年11月3日。
注2 : パーサ・アイアンガー氏、ホルヘ・ロペス氏、アプールヴァ・チャブラ氏による「Gartner View From the 2020 Board of Directors Survey: Complete Survey Data」および「Toolkit Presentation for What the Board Needs to Know About Digital Business」